「結局、何をすればいい?」AI時代の検索広告運用で今から検討すべきこと
- 執筆者:
- 黒岩 奈緒
生成AIの普及と検索体験の変化により、検索広告の運用をどう変えるべきか、迷われている方も多いのではないでしょうか。本記事では、人間が広告を直接制御する時代から、媒体AIにシグナルを渡して最適化する時代への変化を踏まえ、広告主が検討すべき対応を整理します。
はじめに:生成AIが変える検索広告の現在地
運用型広告を取り巻く環境は、生成AIの普及や検索体験の変化により、継続的に変化しています。Google Marketing Liveなどのイベントで発表される内容にも、まったく新しいニュースだけでなく、これまでの流れの延長線上にあるものや、すでにβ版として公開されている機能に関する情報が多く含まれています。
特に検索連動型広告では、AIによる検索体験との統合を見据えた動きが強まっており、検索広告アカウントにおける「運用の勝ち筋」がまた大きく変化しつつあります。また、フィードを活用する広告メニューは、AIチャットやAI検索との相性がよいのが特徴です。顧客横断で共通フォーマットが利用される、構造化されたリアルタイムデータは、AIによる回答生成や広告配信の最適化において重要な役割を果たしています。Google Merchant Centerにおいても継続的にアップデートがおこなわれており、特にECサイトでは、商品フィードの充実やデータ活用への対応が、今後のAI検索経由の流入獲得においても重要になることが見込まれます。
上記は一般的な見解になりつつありますが、一方で、実際に何をすべきかについては、まとまった情報がまだ多くはありません。本記事では、変化の激しい検索広告アカウントを対象に、近年の環境変化と、検討すべき具体的な対応を整理します。
これまでの検索広告運用における前提
変化を正しく捉えるためには、まずこれまでの「勝ち筋」を振り返る必要があります。従来の検索広告運用において、最も重要な要素のひとつは「アカウント構造」でした。
アカウント構造は、ターゲティングやクリエイティブの網羅性だけでなく、PDCAを回すための可読性や管理のしやすさにも影響します。従来は、以下のような観点で構造を設計することが重要でした。
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ユーザーを適切な導線で案内する
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適切な粒度でレポーティングできる
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媒体の自動最適化に適切なシグナルを与える
1.ユーザーを適切な導線で案内する
検索キーワードをLPや広告文が変わる粒度でグループに分類し、検索クエリから推測される意図に合ったページへ遷移させることが成果のために重要でした。また、ひとつの検索クエリに対して、意図しない広告やLPが表示されないよう構造でコントロールすることも、検索広告運用における基本的な考え方でした。
2.適切な粒度でレポーティングできる
指名キーワードやビッグワードなど、表示回数・クリック単価・クリック率・コンバージョン率の傾向が明らかに異なるキーワード群は、キャンペーンや広告グループを分けて管理することが一般的でした。全体における構成変化と、各カテゴリ、特定のKW自体の変化を分けて成果を分析しやすくすること、また、配信目的や予算、目標が異なるキーワード群を分割することで、目標に対する進捗を確認しやすくすることが重要でした。
3.媒体の自動最適化に適切なシグナルを与える
媒体の自動最適化を活用するうえでは、学習ノイズの少ない構造を作ることが重要でした。例えば、同一のクエリで広告が掲出されるグループが複数ある状態、いわゆるクエリコンフリクトは、データ分散が学習に悪影響を与えると考えられており、類似したキーワードは同一のグループにまとめることが推奨されていました。一方で、グループの統合とは、実績の少ないキーワードやクエリに対して、グループ内の実績があるキーワードと近い傾向を示すことが期待されるという情報を媒体に与えることになります。そのため、傾向が大きく異なるキーワードを単純にまとめることは、学習上のノイズになるおそれもありました。
近年の環境変化
近年の変化は、AIチャットと従来の検索体験が融合していく流れを見据えたものだと考えられます。機能そのものの追加だけでなく、ユーザー行動の変化や媒体仕様のアップデートも、新たな検証要素になっています。代表的な変化として、以下が挙げられます。
クエリ拡張において文脈が重視される
検索広告では、以前からインテントマッチの活用が進んできました。近年はさらに、登録キーワードの文字列だけでなく、広告グループ内の文脈や、広告主が設定するシグナルも活用される方向に変化しています。今後は、単にキーワードを登録するだけでなく、その広告グループが「どのようなユーザーに、どのような文脈で表示されるべきか」を媒体に伝える設計が重要になると考えられます。
AI MaxとDSAの統合
AI MaxとDSA(動的検索広告)は、いずれもLPの内容を読み取り、関連する検索意図や広告文を自動的に判断する機能です。2026年10月7日現在、今後DSAキャンペーンはAI Maxキャンペーンに自動アップグレードされる旨がアナウンスされています。現時点では、歴史の長いDSAのほうがLP選定やタイトル表示において安定しているケースもあります。ただし、将来のためにはAI Maxの改善を前提に、運用や検証の準備を進めておくことが必要です。
出典:Google 広告 ヘルプ,「動的検索広告について」
広告グループに対するプロンプト制御
媒体側では、広告グループに対してガイドラインや指示を設定できる機能の強化も進んでいます。単に「表示したくないテキスト」を制御するだけでなく、「誰に」「どのような広告を」「どのように表示したいか」を媒体に伝える方法も変化しています。
「AI Brief」や「テキストのガイドライン」といった制御機能は、現状ではブランドセーフティの文脈での案内されることが多いものの、将来的にはキーワードによる明示的な指定だけでなく、プロンプトやガイドラインによって配信意図を伝える運用が広がっていく可能性も考えられます。
クエリコンフリクトへの仕様対応
従来は、同じ検索クエリに対して複数の広告グループが候補になる場合、入札や品質などの要因によって意図しない広告が表示されることがありました。近年は、文字列一致を優先するルールが公開されるなど、クエリコンフリクトに対する対応が強化されています。ただし、掲出のすみ分けがどの程度行われるかは実際の配信で確かめる必要があり、継続的な確認が必要です。
出典:Google 広告 ヘルプ,「Google 広告アカウント内での広告グループとアセット グループの優先順位付けについて」
ビッグワードの制御方法の変化
ビッグワード検索には、ユーザーの意図を特定しにくいケースと、前後の行動や所在地などから一定の意図を推定できるケースが混在しています。AI Maxやインテントマッチの強化のせいか、詳細な検索クエリを想定した広告グループがビッグワードを拾った時の挙動にも変化が見られます。以前は、ビッグワードの掲出が意図しない配信傾斜を引き起こし、成果悪化につながることがありましたが、近年は同様にビッグワードへの拡張が見られても以前ほど明確な成果悪化が確認されにくくなったと感じています。これについて、媒体側が「キーワードに表れないユーザーの意図」をくみ取り、より適切な広告グループへ割り当てるようになってきた結果であるのではないかと推測しています。こうした変化をふまえると、従来のようにビッグワードのような意図特定が難しいキーワードを明示的に購入し続けることが、必ずしも最適とは限らなくなる可能性があります。
広告主が検討すべき対応
AIチャットやAI検索の普及により、ユーザーの検索行動は今後さらに多様化していくと考えられます。それに伴い、媒体側ではターゲット推定や広告生成の機能が強化され、人間に開示される情報はさらに限定的になっていくでしょう。
これは、二つの理由から今後起こる可能性が高い変化だと考えられます。一つは、1対1のコミュニケーションの最適化が進むほど、扱うデータ量が膨大になることです。もう一つは、AIとの対話には非常に個人的な情報が含まれやすく、ユーザープライバシーの保護がより重要になるためです。
つまり、媒体システムの内部では制御されていても、広告主や運用者が直接確認・操作できないレバーがこれまで以上に増えていくことが予測されます。今後は、人間による明示的な指定がどのような場合に有効で、どのような場合に逆効果になりうるのかを見極めながら、運用方法を見直す必要があります。
レポートとモニタリングを見直す
AI検索やAIチャットに関連する検索行動は、必ずしも従来の検索クエリレポートで十分に把握できるとは限りません。特に、プライバシー保護の観点から、会話内容に近い情報は制限されると予想されます。
また、AI Maxをフルに活用すると、LPも自動選定されるため、広告単位でLPを完全にスプリットテストすることが難しくなります。ここで重要なのは「見た目のCPA」だけで判断しない視点です。ユーザーごとに掲出される広告やLPが異なる世界では、CPAやCVRが悪い広告、CVが少ない広告が、一概に悪いとは判断できません。「購入意図が固まっていないユーザーに刺さりやすい広告」「ニッチ需要を押し広げる広告」は、メインターゲット向けの広告より見た目のCPAやCV量は芳しくないことが予測されますが、増分効果では効率的である可能性があるからです。媒体社が提供するテスト機能もありますが、現状は一長一短です。今後は、変更前後の成果比較や、配信後のモニタリングを前提にした検証設計がより必要になります。
また、広告文とLPの対応関係が複雑になるため、不適切なコミュニケーションが発生するリスクも高まります。あらかじめ「やってはいけないこと」「事後に判断すればよいこと」「事後判断する際の停止基準」を整理し、管理ルールを準備する必要があります。
LP・SEO・AIOの重要性を再評価する
AI検索の利用が拡大し、ユーザーが多様な質問を通じて情報を探すようになると、広告主のWebサイト側にも多様な検索意図に答えるコンテンツの厚みが求められます。AI Maxにおける広告生成やLP自動選択も、Webサイトの情報を利用しているため、広告文やキーワードだけでなく、LPの内容、サイト構造、ソースコード、構造化データなどの改善が、広告成果改善のためにより重要になる可能性があります。AIO(AI Optimization)やGEO(Generative Engine Optimization)が広告成果にも影響する、かつてのSEOと検索広告の関係に近い構造が生まれる可能性があります。
ビッグワード(詳細意図不特定キーワード)の扱いを見直す
今後、キーワード登録は「人間が明確に表示意図を指定するための手段」に近づいていく可能性があります。そのため、人間が適切な広告やLPを判断できないビッグワードについては、単純に登録するのではなく、削除や詳細意図の広告グループへの移行、テキスト生成やURL拡張の活用などを柔軟に検討する必要があります。
ただし、ビッグワードキャンペーンを削除し、別の広告グループからの掲出を狙うような施策が必ずしも成功するとは限りません。明示的な文字列登録が媒体学習にどのような影響を与えるかは、慎重な検証が必要です。
LPトライアルの考え方を変える
従来は、広告にLPを設定し、ABテストによってより成果の高いLPを選ぶことが一般的でした。しかし、LPの自動選定が進むと、ロングLPや短縮LP、訴求軸の異なるLPをあえて並走させ、媒体機能によってユーザーごとのだし分けを行ったほうが、増分効果につながる可能性があります。たとえば、AI Maxを導入し、過去のLP資産を同時に活用する方法も検討余地があります。
プロンプトトライアルを設計する
今後は、広告文だけでなく、マッチングやオーディエンスに関してもプロンプト入力が活用される可能性があります。そのため、プロンプトの実装前後で配信がどのように変わるのか、どのようなシグナルを設定すると望ましい配信に近づくのかを検証する必要があります。
また、すべての広告表示を事前に確認することは難しくなるため、事後チェックやモニタリングの体制について、ルールを定めておくことも重要です。ブランドセーフティを目的に含む機能は、一般的にCV最大化とブランド保護のための指示が競合した場合、ブランド保護を優先するように設計されます。過度な制限は成果への影響につながる可能性もあり、新たなトライアル要素として注視する必要があります。
アッパーファネル向けの配信設計を検討する
将来的には、キーワードをほとんど使わず、配信意図をプロンプトで指定する広告グループが登場する可能性もあります。「疲れを癒したい」と感じているユーザーに対して、勧めるべきは旅行かエステか、家事代行なのか、「きっかけ」だけが見えているユーザーへのアプローチは従来の検索広告では難しさがありました。これまで、そうしたアッパーファネルのユーザー、すなわち情報探索段階にあり購入意図が明確化していないユーザーは、コンバージョン率が低いため、一般にラストクリックCPA評価では非効率と判断されがちでした。しかし、クエリ以外のシグナル活用やAI検索からの流入増加により、アッパーファネル向けの配信でも成果改善の余地が生まれる可能性があります。
最適化のためのシグナルを追加する
今後、なぜその広告が表示されたのかについて、開示される情報はこれまで以上に限定される可能性があります。分析できない情報が増えるほど、人間による制御は難しくなるため、媒体に渡すシグナルの質が重要になります。
中でも、媒体に送るコンバージョンは、自動最適化の判断基準となるため、可能な限り事業成果に近いものにする必要があります。OCI(オフラインコンバージョンインポート)などを活用して外部計測コンバージョンを媒体管理画面に送ることで重複計測CVを排除したり、後工程指標・マイクロコンバージョンを活用してCVを行ったユーザーの属性を分析できる環境を整えたりすることが必要です。また、アプリ内行動やインストール後の行動データなども、シグナルとして検討余地があります。
また、フィード領域は特にアップデートが多く、影響の期待値も高い領域です。フィード内に含まれる商品やサービスの情報、タグで取得する情報は、可能な限り充実させることで、最適化に利用される情報を増やすことができます。現状はコマース関連のニュースが多い状況ですが、今後は業種を問わず、構造化された情報をどれだけ網羅できるかが重要になるでしょう。
広告会社・広告主間で合意しておくべき論点
ユーザー行動の変化を踏まえると、AIによる自動最適化の活用は、不可逆の変化として避けられない状況です。一方で、ユーザーコミュニケーション上のリスクをどこまで許容するかは重要な論点です。基本的な取り決めについて、広告会社と広告主の間で合意することが、施策スピードやリスク管理の観点で重要になります。たとえば、以下のような分岐では、成果と安全性のトレードオフが発生します。現時点ではどちらを選ぶのか、将来的にどうしたいのかを含めて、継続的に対話していく必要があります。
テキストカスタマイズやLP拡張を制限する場合
広告文やLPの自動拡張を制限する場合、表現の管理はしやすくなります。一方で、媒体のAI最適化による探索余地は限定されます。この場合、たとえばモチベーション不特定ワード対応を進めるとしても、広告の自動生成やLPの自動選定は働きにくいため、広告グループあたりの広告数を人力で増やす、LPのバリエーションを人間側で明示的に設計するなど、制限の中で広げる方法が検討されます。
テキストカスタマイズやLP拡張を許容する場合
広告文やLPの自動拡張を許容する場合、媒体のAIがユーザーごとにより適切な広告やLPを選びやすくなります。一方で、想定外の表示や不適切な組み合わせが発生するリスクもあります。
この場合は、事前に許容できない表現や遷移先を定義したうえで、事後モニタリングにおける停止条件を設計することになります。モチベーション不特定ワードに関しては、あえて削除することで、より適切な掲出先が自動選定される可能性が考えられるなど、広げてから制限をかける方法になり、選択できる制御方法に違いが生まれます。
まとめ
AI検索やAIチャットの普及は、広告運用にとって、長く続くユーザー一人ひとりへのコミュニケーション最適化の延長にあります。これがさらに加速することで、検索広告の運用は「キーワード・広告文・LPを人間が明示的に制御する時代」から、「媒体AIに適切なシグナルを渡し、サイトやデータを含めた全体最適を設計する時代」へ変化しています。
今後の運用の重要ポイント
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検索クエリレポートに依存しすぎないモニタリング設計
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LP・サイト構造・構造化データを含めた広告改善
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意図不特定キーワードの運用方法の見直し
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複数LPの同時活用やURL拡張の検証
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プロンプトやガイドラインによる媒体AIへの指示設計
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事業成果に近いコンバージョンシグナルの整備
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AI最適化の許容範囲に関するリスク合意
重要なのは、AIによる最適化を一律に受け入れるか否かではなく、どのような範囲で活用し、どのようなリスクを許容し、どのように検知・停止するかを事前に設計することです。そして将来起こりうる変化を見据えて、今すぐ実現できないことであっても、どのようなステップで対応を進めるのかを議論していくことです。
本記事には、不確実な情報も含まれますが、できる限り具体的に実務へ落とし込めるよう、個別機能や施策をふまえて整理しました。運用の細かな論点も多く含みますが、当社では、戦略策定から細かい実装支援までトータルでサポートする体制を整えています。お気軽にお問い合わせください。
本記事は、Google をはじめとする媒体の公開情報と、当社が運用支援を通じて得た知見・解釈にもとづく当社見解です。筆者の将来予測を含み、各媒体の公式見解を示すものではありません。
この記事の執筆者
黒岩 奈緒
株式会社アイレップ(現Hakuhodo DY ONE)2012年入社。検索連動型広告の運用コンサルティングを中心に、大規模アカウントを多数担当。大量のデータを取り扱ってきた経験を元に、現在は顧客対応と並走して運用の自動化や標準化、情報流通の効率化による全社運用能力の向上を担っている。
広めたいexcel関数:OFFSET
ひとこと:志第一主義の通りに、クライアントとその顧客、社会のことを考えご提案させていただきます
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