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「シルバー」を超えて、「ゴールデン」へ。 ~人生100年時代、デバイスを「翼」に変えるスマートライフ進化論 ー進化する令和シニアのスマートライフ【第10回】

執筆者
JAAA REPORTS
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2025年度から新シリーズとして「進化する令和シニアのスマートライフ」を連載します。近年、シニア層のデジタル化は急速に進んでいます。本企画では、12回にわたり、シニア×デジタルの変化が市場にもたらすインパクトやビジネスチャンスをひも解いていきます。

※本記事は2026年1月5日にJAAA REPORTSに掲載された記事を転載しております
元記事:https://jaaareports.jaaa.ne.jp/post/senior202510

「進化する 令和シニアのスマートライフ」10回目は、株式会社博報堂 生活者発想技術研究所 100年生活者研究所 大高 香世所長からご寄稿いただきます。研究を通して見えてきた新たな令和シニア像をご紹介いただきますので、ぜひ人生100年時代のウェルビーイングマーケティングの視点から令和シニアのスマートライフをお楽しみください。

人生100年時代、長生きを「リスク」から「希望」へ変える実験室

はじめまして、博報堂100年生活者研究所の大高と申します。 当研究所は、「人生100年時代のウェルビーイング」を探求するリビングラボです。私たちの活動の最大の特徴、それは「徹底的な生活者との対話」にあります。これまで「シニアの原宿」で有名な巣鴨で約2年半にわたり自ら「カフェ」を運営し、そこに来店されるお客様にインタビューを行うという、ユニークな方法でフィールドワークを実践してきました。これまでに伺ったお話は延べ2,000名以上、定量調査を含めると50,000名を超える「生の声」と向き合ってきました。 データだけでは見えない、体温のある会話から得た気づき。それは、世の中で語られる「老後の不安」一辺倒の文脈とは異なる、力強いポジティブなエネルギーでした。

な活動の中で、私たちは一人の「希望」に出会いました。 既存のシニア像を軽やかに裏切り、研究所メンバー全員に「こんなふうに年をとりたい!」と思わせてくれた女性。2024年夏、91歳でこの世を去った大崎博子さんです。 本稿では、大崎さんとの共創プロジェクトを通じて見えてきた、令和シニアのリアルなスマートライフと、私たち広告業界が向き合うべき新たな視点について考察します。

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91歳、最期まで「未来」を生きたデジタル・イノベーター

78歳でパソコンを始め、X(旧Twitter)のフォロワー数は20万人超。自らを「高貴香麗者(こうきこうれいしゃ)」と称し、世界中と交流した大崎博子さん。私がXを通じて彼女に惚れ込み、YouTubeでのコラボレーションを打診したときのことです。

https://www.youtube.com/@100nenken

私たちは「シニアのデジタル活用促進」という文脈で企画を考えていましたが、大崎さんは、私たちが想定していた枠組みを遥かに飛び越えていたのです。

初めての打ち合わせは、当然リアルでお伺いすべきだと思っていたところ、
「打ち合わせ、チャットアプリでいいわよね?」
とおっしゃいます。続けて、
「タブレットと2台体制で入るから、こっちにも資料送ってね」と。
90代の方から飛んでくる、あまりにもスマートな提案に面食らいました。

動画撮影中も「これ、どうやったらもっと面白くなるの?」と目を輝かせ、新しいアプリを次々と試す、その姿はまさに未知の領域を開拓する「イノベーター」そのものでした。大崎さんは亡くなる直前まで、昨日の続きよりも明日の新しいことを楽しみにしており、その気持ちは常に未来を向いていたのです。その生き様は、「老後は余生」という固定観念を打ち砕くものでした。

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「シニア市場」の常識を覆す、3つのインサイト

稀代の生活者・大崎さんとの対話から、これからのシニアマーケティングに不可欠な「3つの進化」が見えてきました。

1.    資産価値の転換:金融資産よりも「好奇心資産」

シニア市場の課題として挙げられる「変化への抵抗感」、中でも特にデジタルへの恐怖心は、大崎さんには皆無でした。「知れば知るほど世界が広がる」と笑う彼女の原動力は、純粋な好奇心です。人生100年時代において、ココロを若々しく保ち、社会と接続し続ける鍵は、この「好奇心資産」にあります。大崎さんは90代になっても好奇心資産を運用し続けることで、自らのウェルビーイングを更新し続けていました。

2.    デジタルの役割:マイナスの補完から、プラスの「拡張」へ

従来のシニア向けプロダクトは、衰えた機能を補う「やさしさ」や「不便の解消」に主眼が置かれていました。しかし、大崎さんにとってデジタルデバイスは、身体的な限界を突破する「心身機能の拡張ツール」でした。足腰が弱くなっても、指先ひとつで海外にいらっしゃるご家族と乾杯し、会ったことのない若者と感情を分かち合う。デジタル空間によって身体的老いから解放され、自由自在に動けるフィールドとなっていたのです。

3.    世代価値の再定義:シルバーを超えて、「ゴールデン」へ

60代以上を「シルバー層」と呼び、引退後の静かな時間と捉えるのは、もはや過去の話かもしれません。 朝は太極拳に励み、週に一度は麻雀卓を囲み、毎晩の晩酌をたしなむ。第二の現役として人生を謳歌する大崎さんの姿は、夕暮れ時の光が最も黄金色に輝くように、「ゴールデンステージ」を駆け抜けているように見えました。「シニア=シルバー」というバイアスを捨て、輝ける「ゴールデン」世代として捉え直す必要があるのではないでしょうか。

応援すべきは「余生」から「覚醒」へ

ここから導き出されるのは、私たち広告業界への問いかけです。

文字を大きくする、カタカナ言葉はできるだけ使わない……。 これまでのシニアマーケティングは、いかに不便を取り除くかという「ユーザビリティ(使いやすさ)」の競争でした。しかし、大崎さんが求めていたのは、心をワクワクさせる遊び心、すなわち「クリエイティビティ(創造性)」の共創です。

読者のみなさま、ぜひ次の企画会議ではこの3つの問いを立ててみませんか?

問い1:そのマーケティングは「年齢」に縛られていないか?

「70代以上」と括った瞬間、イノベーターの顔は見えなくなります。実年齢ではなく、精神的な若さである「好奇心偏差値」で市場を見直してみませんか。

問い2:そのアイデアに「いたずら(遊び心)」はあるか?

「安心・安全」などのいたわりスペックを超えた、ワクワクする体験価値こそが、彼らの好奇心に火をつけます。

問い3:そのクリエイティブは、未来へ羽ばたく「翼」になっているか?

いたわりの発想は、転ばぬ先の「杖」を生みます。しかし、ゴールデン世代が真に求めているのは、身体的制約を超えて自由に飛び回るための「翼」なのです。

人生100年時代を、もっとも「クリエイティブ」な時代へ

博報堂100年生活者研究所は、巣鴨での対話や大崎さんとの出会いをヒントに、人生100年時代を「長すぎて辛い時代」から「長く生きるほど面白い時代」へと変えていきたいと考えています。

私たちが挑むのは、「老い」という概念そのもののリブランディング。 そしてそれは、やがてシニアになる私たち自身の「未来」をデザインすることでもあります。

「シルバー」から「ゴールデン」へ。この社会課題であり、かつ自分ごとでもあるテーマに、広告の力で「翼」を共に創っていきませんか。

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JAAA REPORTSでは、日本広告業協会(Japan Advertising Agencies Association)からの情報を発信しています。広告ビジネスに関する最新動向やトピックス、協会の多岐にわたる事業活動などをお届けします。

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大高 香世

株式会社博報堂
生活者発想技術研究所
100年生活者研究所 所長

博報堂に入社以来、30年以上にわたりマーケティング戦略の立案や新規事業開発を推進。
2013年には生活者との共創マーケティングを専門とする博報堂の子会社「VoiceVision」を設立し代表取締役社長に就任。
2023年からは人生100年時代の新しい幸福モデルを探求するリビングラボ「100年生活者研究所」を立ち上げ、産官学メディアと連携しながらウェルビーイングな社会の実現を目指している。

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