GEO/LLMO時代のテクニカルSEO最前線 〜誤解だらけのテクニカルSEO/GEO/LLMOのリアルを解き明かす〜
- 執筆者:
- 川口 摩悠美
2026年7月7日、「Japan SEO Conference 2026」が開催されました。本記事では、SEOの第一線で活躍する3名のスペシャリストによるセッション「GEO/LLMO時代のテクニカルSEO最前線〜誤解だらけのテクニカルSEO/GEO/LLMOのリアルを解き明かす〜」について、当日の議論を整理してレポートします。GEO/LLMOをめぐる過度な期待や誤解を整理しながら、AI検索時代においても企業が押さえておきたいテクニカルSEOの要点を紹介します。
【登壇者】
FIFTY-EIGHT, LLC 吉野 五十也 氏
アユダンテ株式会社 コガン・ポリーナ 氏
株式会社Hakuhodo DY ONE 登 章良 氏
【モデレーター】
株式会社Faber Company 小丸 広海 氏
※本記事は、2026年7月7日に開催されたカンファレンスの内容をもとに、一部加筆・修正して掲載しております。
SEO/GEO/LLMOの現在地
生成AIの普及に伴い検索の多様化が進む中、本セッションでは、具体的なデータや検証結果をもとに、現在のGEO/LLMOやテクニカルSEOが置かれているリアルな現在地が紐解かれました。
サーバーログ分析によるAIクローラーの挙動検証
コガン・ポリーナ氏は、サーバーログの解析結果にもとづき、AIボットの挙動について、一般的な通説とログ上の実態には乖離があることを指摘しました。
「llms.txt」へのアクセス実態と指示の遵守
AI専用の誘導ファイルとして注目される「llms.txt」ですが、今回の実データの解析では主要なAIボットからのアクセスは現時点で確認されていません。また、多くのボットがrobots.txtの指示を概ね遵守している一方で、例外的な挙動も見られるため、サーバーログから各ボットのアクセス状況を個別に確認することを推奨しました。
AIの推論による「非実在URL(404)」へのリクエスト
ログ上では、サイト内に存在しないURLへアクセスする挙動が確認されています。これは、AIが過去の学習データやサイト構造からURLを推論(ハルシネーション)してアクセスを試行しているためと考えられます。こうした「AIが求めているが欠落している情報」を特定し、適切なページへリダイレクト処理をおこなう、もしくは新しいページの作成を検討することは、GEOにおける情報伝達の機会損失を防ぐ手段のひとつとして紹介しました。
アユダンテ株式会社 コガン・ポリーナ 氏
また、吉野氏はログ解析の際の注意点として、User-Agent偽装のリスクを指摘しました。ログ上で「OpenAI」や「Googlebot」と表示されていても、第三者によるスクレイピングである可能性があります。そのため、解析の際はUser-Agent名だけでなく、各プラットフォーマーが公開している公式のIPアドレスの範囲(IPレンジ)と照合し、「本物のボットかどうか」を検証する工程を推奨しました。
大規模サイトにおけるLLMを活用したSEO施策
吉野氏は、AIを「対策対象」としてだけでなく「改善ツール」として活用する具体的なフレームワークを紹介しました。 数万件の商品ページを持つ大規模サイトにおいて、タイトルを人手で最適化するには限界があります。LLMを活用する際は、「SEOに強いタイトルを生成して」と指示するのではなく、以下のような人間が判断基準としているデータや制約をインプットする設計を紹介しました。
- 検索パフォーマンスの実績値(Search Console)
すでに流入や成果につながっている「守るべきキーワード」を特定し、既存評価を維持する。 - 商品マスター情報の属性データ
ブランド名をはじめ独自のスペックや強みなど、人間がタイトルに盛り込みたい「差別化要素」をナレッジとして注入する。 - ブランドガイドラインやコンプライアンスの制約
表記揺れや法的NG表現、ブランド毀損のリスクを排除し、品質の最低ラインを制御する。
これらのデータをBigQueryに集約し、Geminiを呼び出すSQL関数「ML.GENERATE_TEXT」を活用することで、1本のSQLで数万件のタイトルを一括で生成できます。この手法はタイトルの最適化にとどまらず、膨大なデータから検索結果の変動サマリーを自動生成してページ上部に配置するといった、コンテンツの品質向上にも広く応用できると述べました。
FIFTY-EIGHT, LLC 吉野 五十也 氏
推論プロセスから考える「AIに理解されやすい情報」の構造
登氏は、AIが回答を生成する際、ユーザーの問いをそのまま検索するのではなく、複数の「サブクエリ(判断軸)」に分解して考えているプロセスを解説しました。「転職活動におすすめの求人サイトはありますか」という問いに対し、AIが優先する判断軸がモデルやバージョンによって異なる傾向が見られました。「モデルA」は、カテゴリ情報の整理状況や出典の明記、代理店型とネット型の違いといった論理的な構成に重点を置く一方で、「モデルB」は総合型、ハイクラス、IT・エンジニア、女性向けといった、ユーザーの属性や専門性にもとづいたカテゴリの網羅性を重視して情報を整理します。
また推論プロセスでは、一つの問いを複数の「サブクエリ」に分解する「クエリファンアウト」が発生しています。登氏はこの分解されたサブクエリの各項目に対して、自社の情報が正しく適合しているかが重要と述べました。特定業界においては、サブクエリのSEOスコアとGEOスコアに一定の正の相関が見られるという当社の分析結果からも、従来のSEOで重視されてきたサイト構造の最適化やコンテンツの品質担保は、AI検索時代においても有効な基盤になりうるとの見解を示しました。

株式会社Hakuhodo DY ONE 登 章良 氏
誤解されているGEO/LLMOテクニカルのリアル
AI検索への関心が高まり、さまざまな施策が語られる一方で、現場では「何が本当に有効なのか」という確かなエビデンスが不足しています。ここでは、コガン氏がこの1年間、国内外のLLMO動向を俯瞰するなかで見出した課題、そして登氏によるAIの推論プロセスの解析結果をもとに、GEO/LLMOの現状を冷静に分析します。
1年間の観測から見える「LLMO」の現状と注意点
コガン・ポリーナ氏は、この1年間のLLMOを取り巻く市場の動向を振り返り、企業が直面している課題と、本来注力すべき本質的な施策について解説しました。昨今、構造化データの充実やリンク切れの修正など、従来の基本的なSEO施策を「AI対策」として提案されるケースが見受けられます。これらはサイトの基礎体力を高める重要な施策ではあるものの、それらが既存のSEOの延長線上にあるものか、AIに特化した独自の価値があるものかを冷静に見極める必要があると指摘しました。
基本的なSEOに加え、AIに正しく参照・理解されるために重視したいテクニカル・戦略的領域として、以下のような点を挙げました。
- レンダリングとクローラビリティの担保
AIクローラーが情報を正確に抽出できるよう、JavaScriptに依存しないコンテンツ表示や、クローラビリティを考慮したサイト設計。 - 網羅的な「コンテンツハブ」の構築
特定の専門分野においてAIが「このサイトが包括的で信頼できる」と判断できるような、網羅性の高い情報群の構築。 - 外部媒体での言及(メンション)を獲得するデジタルPR
AIが回答を生成する際には、自社サイト内の情報だけでなく、第三者による言及や評価が参照される場合もあるため、専門メディアなどの外部媒体で自社ブランドが言及(メンション)されるためのデジタルPR活動を並行。
推論プロセスの解析が示唆する、AIに正しく評価されるための技術的要件
登氏は、AIの推論プロセスにおける「ブランドの重要性」と「特定ブランドの回避行動」という二つの側面から、実務上の注意点を解説しました。
まずブランドの重要性について、不動産業界などの具体的な検索例を挙げ、AIが回答を生成する過程で「全国規模の大手ポータルサイト」や「特定地域の専門サイト」を名指しで参照している実態を紹介しました。サブクエリの形態素解析結果からも、頻出単語として具体的なブランド名が多く含まれていることが確認されており、AIが一種の「指名検索」をおこなっているような挙動が見られます。このことから、特定の領域においては小手先の技術対策だけでは対応できない「ブランドの信頼性や権威性」が、回答の構成要素として機能しているのではないかとの見解を示しました。
一方で、誰もが知る著名なブランドであっても、回答から「除外」されてしまうような挙動が思考プロセス※1上で確認されている点について言及し、その要因に関する考察を述べました。AIが情報を取得する過程で、特定のブランドを回答候補に含めない判断を下す背景として、以下のような要因を指摘しています。
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公式情報の不足
公式サイト内に裏付けとなるデータが十分に見当たらず、AIによる信頼性の評価に影響を与えている可能性。 - 技術的なアクセシビリティ
主要なコンテンツがJavaScript(CSR)に依存して展開されており、AIボットが情報を十分に収集・理解できていない可能性。
これらの分析結果から、これからのSEOにおいては「読み取りやすさ(クローラビリティ)」の確保に加え、AIの推論を支える「公式情報の拡充」なども並行して検討していく必要があると言及しました。
※1…本記事における「思考プロセス」とは、各AIプラットフォームのAPIを通じて取得可能な思考・リーズニングに関する出力情報を指す。取得可能な情報の範囲・形式は、AIモデルおよびAPI仕様によって異なる。
2027年以降のテクニカル予想
登壇者3名は、AI検索の利用がさらに広がると想定される2027年以降のテクニカルSEOについてそれぞれの展望を語り、セッションを締めくくりました。
登氏:エージェンティック・コマースの台頭
今後はユーザーの代わりにAIエージェントが各サイトを巡回し、比較・検討をおこなう「AI対AI(A2A)」の世界へと移行していくことが予測されます。そこでは、AI同士がいかに正確に情報を授受できるかが焦点となるでしょう。
吉野氏:「一覧ページ」の役割の変化
ユーザーに代わりAIが商品を検索・比較する「エージェンティック・コマース」が普及すれば、人間がサイト内の商品一覧を回遊する手間は省かれます。情報を整理して並べるだけの機能はAIに代替される可能性があるため、今後は「特定のエージェント(接客体験)があるからそのサイトを訪れる」といった、独自のブランド体験の設計が差別化の鍵になると考えられます。
コガン・ポリーナ氏:SEOの本質への回帰
LLMOという新しい言葉に過度に振り回されるのではなく、ボットが確実に情報を読み取れる技術基盤を整えることや、外部メディアでの信頼性を積み上げることといった、SEOの「原点」が改めて重要視される時代になると推察されます。
まとめ
GEO/LLMOという新しい言葉が広がる一方で、今回のセッションから見えてきたのは、クローラビリティの確保、構造化された情報設計、信頼できる外部情報の積み上げといった、SEOの基本が引き続き重要であるという点です。AI検索時代に向けた対応は、従来のSEOと切り離された独立した対策として捉えるのではなく、ユーザーと検索エンジン、そしてAIが正しく情報を理解できる状態を整えることから始まるといえるでしょう。
この記事の著者
川口 摩悠美
2012年に株式会社アイレップ(現Hakuhodo DY ONE)へ入社。SEOコンサルタント・マネジメントを経て、現在はマーケティング担当を務める。データベース型サイトからブランドサイトまで幅広いSEO支援実績をベースに、変化する検索環境を見据えたマーケティング活動と情報発信に取り組んでいる。
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