BeRealの効果的なクリエイティブ戦略とは
- 執筆者:
- 野口 恵里
「“ありのまま”で響く BeReal広告」と題し、全3回にわたってBeReal(ビーリアル)広告の可能性を探求する本シリーズ。完結編となる第三回では、BeRealユーザーの共感を呼び起こし、広告効果を飛躍的に向上させるためのBeReal特化型クリエイティブ制作の極意を解き明かします。
SNSマーケティングが高度に洗練された現代において、Z世代は「作りこまれた広告」に敏感なため、等身大のコミュニケーションをより強く求めています。BeRealの核心である「圧倒的リアル感」と「デュアルカメラ※の二面性」を最大限に活用したクリエイティブは、特に認知拡大と興味喚起のファネル上部で効果を発揮し、従来の広告手法を根本から覆す革新的なアプローチとなります。
本記事では、BeReal広告の特長とユーザーのモチベーションを徹底分析し、BeReal広告で圧倒的な成果を生み出すための具体的な戦略とテクニックなど、すぐに実践できる形で詳細に解説していきます。
※デュアルカメラ…スマートフォンのフロントカメラとバックカメラ(背面カメラ)を指します。
※本記事は、BeReal監修のもと執筆しています
BeReal広告の成功を左右する「リアル感」の追求
BeRealの最大の特徴、それは加工や演出を排した「等身大の日常を共有する」という点にあります。BeRealユーザーは親しい友人向けに自分の「ありのままの日常」を共有するため、映えやバズることが目的になっていないからです。この世界観に調和するクリエイティブこそが、ユーザーの共感を呼び、広告効果に直結します。
一般ユーザーの投稿に溶け込む「自然な見た目」を意識する
BeReal広告のクリエイティブにおいて最も重要なのは、広告であることを意識させない「自然さ」です。ユーザーが思わず立ち止まり、「これは友達の投稿かも?」と感じられるような、飾らない日常の一コマを切り取ったクリエイティブこそが広告効果を向上させるカギとなります。
(図1:広告であることを意識させない「自然」なクリエイティブとは)
過度な加工や演出は避ける
フィルターやプロフェッショナルさを感じさせるエフェクトを多用した、いかにも「広告」然としたクリエイティブは、BeRealの世界観にそぐわず、ユーザーに敬遠される可能性があります。スマートフォンのカメラで撮影したような、素朴な質感の映像や画像が好ましいでしょう。室内の自然光やわずかなブレといった、完璧ではない構図が、むしろBeRealにとっての「リアル感」を演出します。
日常のワンシーンを切り取る
商品やサービスを大々的にアピールするのではなく、ユーザーの日常生活の中に自然に溶け込んでいる様子を表現します。たとえば、友人との楽しい会話の背景に何気なく映り込む商品や、日常の忙しさの中でたまたま活躍するサービスの一場面など、ユーザーが「押し売り」ではなくBeReal内で「発見」を体験できるシチュエーションが効果的です。
「映え」よりも「共感」を重視
BeRealユーザーが求めるのは、Instagramのような「理想の瞬間」ではなく、「自分も経験する」リアルな日常です。「これ、わかる!」「私もこんな時ある!」と思わず声に出したくなるような、等身大の共感ポイントを中心に据えたクリエイティブが、高いエンゲージメントを生み出します。
「デュアルカメラ構図」を最大限に活用する
BeRealの独自機能である「デュアルカメラ構図」は、広告クリエイティブにおいても強力な武器となります。フロントカメラでユーザーの表情やリアクションを、バックカメラで商品や利用シーンといったリアルな使用体験を同時に映し出すことで、従来のSNSの広告では不可能だった「ユーザーの感情と体験の同時伝達」を実現。この構図によって、より多角的な情報伝達と高いエンゲージメントが期待できます。
(図2:BeReal.の独自機能「デュアルカメラ構図」について)
画像引用:BeReal.
フロントカメラに人物の自撮り、バックカメラに商品・利用シーン
フロントカメラの人物の「驚き」や「発見」といった瞬間を捉えた表情が視線のアンカーポイントとなり、バックカメラの商品・サービス利用シーンへの好奇心を掻き立てます。この構図は、ユーザーの視線を自然に誘導し、広告への没入感を高めます。フロントカメラに映る人物の表情やリアクションは、商品の魅力や利用体験をリアルに伝え、ユーザーに自分ごととして捉えてもらいやすくなります。
感情移入を誘発する表情のクローズアップ
フロントカメラの人物は、商品を使った際の喜びや驚き、満足感といった感情を表情で表現することで、ユーザーの共感を誘います。たとえば、新しいスニーカーを箱から開封する瞬間の「ワクワク感」、初めてそのスニーカーを履いたときの「驚き」、それを友だちと共有する「嬉しさ」など、感情の曲線を意識した表情設計が重要となります。また、顔全体を映し出すクリエイティブも良いですが、目元や口元だけのクローズアップも、遊びを持たせつつ親密感を増幅させる秘訣です。
商品やサービスの「リアルな利用シーン」を映し出す
バックカメラでは、単なる商品紹介に留めるのではなく、商品やサービスが実際にどのように使われているのかを具体的に示すことで、BeRealユーザー自身が体験したくなる瞬間を切り取ります。単に商品を置くだけでなく、実際に手に取って使っている様子や、サービスを利用している場面など、ストーリー性のあるシークエンスによって、ユーザーが利用イメージを膨らませやすいように工夫することが重要です。
BeReal.でのクリエイティブ成功の3つの黄金ルール
テキストは「少なく」「自然に」で広告っぽさをゼロに
デジタルネイティブが多いBeRealユーザーは作りこまれた広告に敏感です。クリエイティブ内のテキストは「友達に送ったメッセージ」のように自然に溶け込ませることで、ユーザーの警戒心を解き、広告効果の向上につながります。

(図3:BeReal.に最適化されたテキスト表現)
視覚優先のストーリーテリング
BeRealでは、テキストを抑えて感情や体験を伝えることが重要です。BeRealは基本的に静止画フォーマットのため、デュアルカメラの視線導線設計が重要です。ユーザーの視線は自然とフロントカメラの人物の表情に引き寄せられ、その表情から感情を読み取った後、バックカメラに映る商品や利用シーンへと視線が移動します。たとえば、新しいスニーカーを紹介する場合、フロントカメラには「新しいスニーカーを履いた瞬間の驚きと喜びの表情」を、バックカメラには「実際に箱から出したばかりの新品スニーカーと、それを履こうとしている手元」を映し出します。この一枚の静止画から、ユーザーは「この人は今朝新しいスニーカーを手に入れて、これから友達と出かけるんだろうな」という前後のストーリーを自分の脳内で自然に補完します。このように、一瞬を切り取った静止画であっても、表情と状況の組み合わせによって時系列のストーリーをユーザー自身にイメージさせることで、自分自身がその体験をしているかのような没入感を得られ、自然と購入意欲が高まります。
3秒ルールを意識した情報設計
これはSNS全般に共通するルールですが、同様にBeRealでもユーザーがスクロールする3秒以内に伝わるよう、本当に必要な情報(商品名・キャンペーン名など)だけをピンポイントで配置します。説明的な文章は「友達との会話」を意識した一言に置き換えるのがコツです。
Z世代言語でカジュアルに
絵文字や略語、トレンドワードを自然に取り入れた「友達同士の会話」のようなテキスト表現が、圧倒的な親近感とエンゲージメントを生み出します。たとえば、英会話スクールであれば「キャンペーン実施中!」等のキャンペーンを直接訴求するような長文の表現ではなく「勉強苦手な私でも意外と続けられたわ👀」のように、Z世代が日常的に使うカジュアルなフレーズを活用することで、広告との心理的距離を縮め、自分に関係のある情報として受け取ってもらいやすくなります。ただし、無理に若者言葉を使いすぎると逆効果になる場合もあるため、ブランドの世界観とのバランスを取ることも重要です。
Z世代の心を掴む「共感シーン」設計術 - 彼らの日常に自然に溶け込むクリエイティブ
BeRealの主要ユーザーであるZ世代は、SNS広告に対して高度なフィルター能力を持っています。彼らは自分の生活に本当に役立つか、自分の価値観に共鳴するかを瞬時に見極め、それ以外は容赦なくスクロールする傾向にあります。そのため、彼らの実際の行動パターンや価値観に基づいた「共感シーン」を緻密に設計することが、BeReal広告成功を左右する重要な要素です。

(図4:共感シーンの緻密設計)
Z世代の「行動文脈」に合わせた利用シーン設計
単なる商品紹介ではなく、Z世代が実際に過ごす場所や時間、彼らの行動習慣に溶け込んだ利用シーンを設計しましょう。彼らの価値観と行動パターンを反映したシーンが共感を呼びます。
Z世代が大切にする「自分らしさの表現」を取り入れる
Z世代は他の世代に比べて個性の表現とコミュニティへの所属感の両方を重視する傾向があります。彼らが自分のアイデンティティを表現する方法(特定の音楽ジャンル、サステナビリティへの関心、DIY文化など)を理解し、それを尊重したクリエイティブは高い共感を得られます。たとえば、環境に配慮した商品の認知を目的とする場合、「地球に優しい選択をする自分」という自己イメージを強化するようなシーンを演出することで、Z世代の自分らしさの表現をサポートするブランドとして認識されます。
「マイクロモーメント」を捉えた瞬間設計
Z世代の日常には、SNSでは語られないけれど、誰もが共感できる小さな瞬間が無数に存在します。「レポート提出直後のカフェでの解放感」「アルバイト後の疲れた帰り道で見つけた癒し」「友達との待ち合わせ前の数分間」など、彼らの生活に点在するマイクロモーメントを捉えたクリエイティブは、強い共感と自分のための広告という印象を与えます。特に、フロントカメラにその瞬間の表情を、バックカメラにその状況を映し出すことで、BeRealならではの臨場感を創出できます。
Z世代の「関係性重視」の価値観を反映
Z世代にとって商品やサービスは、単なる機能や価格以上に「友人との関係性をどう深められるか」という文脈で評価されます。「友達と一緒に楽しむ」「共有できる体験」「会話のきっかけになる」といった関係性強化につながるシーンを演出することで、Z世代の深層心理に訴求できるクリエイティブになります。具体的には、「友達と一緒に初めての料理にチャレンジする瞬間」「グループでのアウトドア体験で役立つアイテム」などは、関係性重視のZ世代の心を掴みやすいシーン設計です。
タレント起用よりも「自然さ」がカギ - Z世代の"本物志向"を理解する
有名・無名を問わず、タレントを起用すること自体はBeReal広告のCTRやエンゲージメント率に大きな影響を与えない傾向があります。重要なのは、タレントの知名度よりも「BeRealらしい自然なシーン」を演出できるかどうかです。この傾向は、Z世代特有の「本物志向」が背景にあります。長年、完璧に演出されたインフルエンサーマーケティングに触れ続けた結果、本物の体験を渇望しているユーザーが多いのです。

(図5:インフルエンサーの起用による影響)
最適なインフルエンサー選定の新基準
BeReal広告において最も効果的なのは、フォロワー数の多寡ではなく「共感性」と「信頼性」です。ナノインフルエンサーからマクロインフルエンサーまで、フォロワー規模は関係ありません。重要なのは、ターゲットとなるZ世代ユーザーの価値観や日常に寄り添い、自然体で商品やサービスを体験できる人物かどうかという点です。この「共感性」と「信頼性」の見極めは、ユーザーインサイトとプラットフォーム特性を深く理解した広告会社のノウハウが活きる領域であり、適切な人選がBeReal広告の成否を大きく左右します。
一般ユーザーのような親近感を重視
広告に登場する人物は、ユーザーにとって親近感が湧くような「隣にいる友達」のような存在を目指しましょう。過剰な演出は避け、自然な表情や動きを意識します。実際、構成として完璧すぎるクリエイティブよりも「ちょっとした不完全さ」があるクリエイティブの方が高いCTRやエンゲージメントを導きやすい傾向にあります。たとえば、完璧ではないメイク、整理されていない背景などの「リアルな要素」を意図的に取り入れることで、Z世代の「作り込まれた広告への抵抗感」を軽減することができます。
効果的なBeReal広告を実現するために気をつけたい表現—クリエイティブパターンとアプローチ
既存素材の活用とBeReal向け最適化のバランス
テレビCMやInstagram、TikTok用に制作された既存素材をBeReal広告に活用することは可能ですが、プラットフォームの特性に合わせた適切な調整が重要です。BeReal向けに最適化することで、広告効果を最大限に引き出すことができます。

(図6:既存素材の活用とBeReal向け最適化のバランス)
※生成AIを使用して作成しています
既存素材活用のポイント
テレビCMや他SNS向け素材を活用する場合は、BeReal特有の「バックカメラとフロントカメラの二面性」を意識した再構成を検討しましょう。完全な作り直しが難しい場合でも、フロントカメラ部分の追加や構図の工夫など、部分的な最適化で効果を高められます。BeReal専用に制作されたクリエイティブはより高い広告効果につながる傾向がありますが、適切に調整された既存素材でも十分に効果を発揮できるケースが多くあります。
Z世代の「本物志向」に寄り添う表現
テレビCMなどの従来の広告素材は洗練された演出が特徴ですが、BeRealの世界観は「飾らない日常の共有」にあります。既存素材を活用する場合でも、過度に完璧すぎる演出よりも、少し肩の力を抜いた表現の方がZ世代ユーザーに受け入れられやすい傾向があります。重要なのは「広告らしさ」をどれだけ軽減できるかという点です。
実用的なアプローチ
予算や時間の制約がある場合は既存素材の活用も十分実用的ではあるものの、理想的にはBeReal専用の撮影がより効果的です。たとえば、飲料系ブランドであればバックカメラでは既存のテレビCM映像を活かしながら、フロントカメラにこれから商品のボトルを開こうとしている瞬間や、オフィスでの社員の休憩時間の様子を加えるだけでも、部分的な「リアル感」を追加できるので親近感が生まれます。どちらのアプローチでも、BeRealの世界観を意識した調整を加えることで、広告効果を向上させることが可能です。
フロントカメラ活用の重要ポイント「人間性を失わせない表現を」
BeRealのデュアルカメラ機能における小窓は、ブランドと人間との接点を生み出す貴重な空間です。このフロントカメラに商品や企業ロゴのみを配置する使い方もありますが、プラットフォームの特性をより効果的に活用する余地がある場合もあります。
(図7:フロントカメラ活用の重要ポイント)
※生成AIを使用して作成しています
人間不在のコミュニケーションがもたらす違和感
BeRealのフロントカメラは、ユーザーの素直な表情やリアルタイムのリアクションが映し出される特別な場所です。この空間にロゴだけを無機質に配置すると、ユーザー投稿の自然な流れを阻害し、BeRealの「人と人をつなぐ」というコア価値を損ないます。フロントカメラに人物が映っていない広告は、人物が映っている広告と比較してエンゲージメント率が低下しやすい傾向もあります。
「広告」というラベルが起こす心理的ブロック
Z世代ユーザーは広告に対して高度な識別能力を持ち、「これは広告だ」と判断した瞬間に心理的バリアを形成します。フロントカメラにロゴのみを配置した広告は、一目で「広告」と認識されやすく、ユーザーの興味関心を失う決定的な要因となります。特に10代後半から20代前半のユーザー層では、この傾向が顕著で、広告らしさを感じた瞬間にスクロールする習慣が根付いています。
効果的な小窓活用のベストプラクティス
フロントカメラは「人間的要素」を通じて商品の魅力を間接的に伝える「感情の窓」として最適化しましょう。たとえば、商品を使用したときの驚きや喜びの表情、製品に対する正直な反応、あるいは製品開発者の誇りに満ちた表情など、「人」を介した感情の共有がZ世代の共感を呼びます。サステナブルな製品を提供するブランドであれば、バックカメラに製品を、フロントカメラには自然環境の中でリラックスする開発者の姿を映すことで、ブランドの価値観を暗黙的に伝えることができます。ユーザーはこうした「人間味のある文脈」の中で商品を見ることで、ブランドへの信頼感と親近感を自然と育みます。
まとめ
BeReal広告で成果を出すためには、「リアル感」を追求し、BeReal特有の「デュアルカメラ構図」を最大限に活用することが不可欠です。過度な加工や演出を避け、一般ユーザーの投稿に溶け込むような「自然な見た目」を意識し、Z世代の日常に寄り添った「共感を呼ぶ利用シーン」を提示しましょう。そして、クリエイティブ内のテキストは最小限に抑え、視覚的な訴求を優先することで、広告感を薄め、ユーザーの心を掴むことができます。テレビCM素材の単純流用や、フロントカメラに商品・企業ロゴのみを配置するような、BeRealの世界観にそぐわないクリエイティブはなるべく避けるようにしつつ、ユーザーに寄り添う表現を徹底することを推奨します。
BeRealのユニークな特性を理解し、ユーザーの視点に立ったクリエイティブを制作することで、BeReal広告は企業のビジネス成長に大きく貢献するでしょう。BeReal広告実施をご希望の場合は、お気軽にご相談ください。課題に合わせた最適なBeReal広告の戦略をご提案し、効果最大化をサポートいたします。
▼第一回、第二回はこちら
この記事の著者
野口 恵里
商社での営業経験を経て、2022年に株式会社デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(現:株式会社Hakuhodo DY ONE)へ中途入社。メディアビジネス本部に所属し、媒体社との協業業務を担当。現在X・TikTok・BeReal担当として、媒体社のセールス活動、社内向け情報発信、社内からの相談対応等に従事。
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