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“次の一手”を生み出すために!「リフトした」で満足しないブランドリフト調査(BLS)との付き合い方

執筆者
プラットフォームR&D本部 ブランドR&D局
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デジタルマーケティングの世界でブランド・エクイティの向上は、多くの企業が目指す重要なテーマです。しかし広告を打ち出したとしても、生活者の意識を捉えるのは容易ではなく「自社ブランドはどのように受容されているのか?」「広告は生活者の意識を変えられたのか?」といった点は曖昧になりがちです。効果測定ともなると「わかりにくい」「数値化しづらい」という悩みに直面する方も多いのではないでしょうか。

こうした課題に対し、ブランドリフト調査(Brand Lift Survey, 以下BLS)は、ブランド認知や購買意向などの“態度変容”を定量的に捉える手段として活用されています。

本記事では、BLSに初めて触れる方にはもちろん、既に活用している方にも役立つよう、一歩踏み込んだ実践的なBLS活用方法をご紹介します。

BLSの結果を見て「リフトしたからOK」と、安心して終わってしまう。あるいは「リフトしなかった…」と、原因究明を諦めてしまう――。BLS導入に際して陥りがちなあるあるを打破して、BLSを”次の一手”となるアクションに繋げていきましょう。 

ブランドリフト調査(BLS)とは?

まずはブランドリフト調査(BLS)とは何か、その基本を整理しましょう。BLSとは、主にブランディング広告施策において、広告との接触が生活者の態度変容にどの程度の影響をもたらしたかを定量的に測定するための調査です。具体的には、調査対象の広告に「接触したグループ」と「接触していないグループ」という二群を設け、それぞれにアンケート調査を実施することで計測をおこないます。両群の回答差分を比較することで、広告接触がブランド認知や購買意向といった意識指標に与えた影響を推定します。

例えば「この商品を知っていますか?」といった質問に対して、接触群と非接触群のポジティブな反応の違いを見ることで、広告との接触がユーザーの態度をどれだけ変容させられたかを確認できるのです。

では、なぜBLSが必要なのでしょうか? 

それは「ブランドを知ってもらう」「商品に良い印象を持ってもらう」といった、ブランディング広告施策で追うべき成果が、通常の広告レポートでは直接追うことのできないユーザーの意識のなかにあるからです。CPAやCVRといった獲得指標がレポートで確認できる一方で、「ブランド認知」「メッセージ認知」「好意度」といった意識指標の可視化は難しいのが実情です。BLSはこれらの見えにくい意識指標を数値的に可視化し、実施施策の成果判断や、次回施策のメディアプランニングに向けた”次の一手”を検討するための根拠となるデータを提供します。

BLSで測定できる代表的な項目としては、以下の通りです。

  • 広告想起 (Ad Recall): 広告が記憶に残っているか

  • 認知度 (Awareness): ブランドやサービスの認知度
  •  好意度 (Favorability): ブランドやサービスへの好感度
  • 比較検討 (Consideration): ブランドやサービスへの比較検討の度合
  • 購入意向 (Purchase Intent): ブランドやサービスの購入や利用に対する意向

 なお、選択可能な測定項目や設問文は媒体によって異なります。 

挿入画像1(ブランドリフト調査(BLS)とは?)

その「リフト」は信頼できますか? 

BLSの調査結果レポートが出るとつい「〇〇ptsリフトした!」という数値だけを見て、施策の良し悪しの判断をしたくなってしまうものです。ですが、ここで確認したいのが、そのリフトが本当に"信頼できるものなのかどうか"です。

BLSを読み解くうえで欠かせないのが、信頼度という考え方です。信頼度とは、調査で得られたリフト値が単なる偶然ではなく、広告によって生じたと言える確からしさを示す統計指標です。言い換えれば「同じ調査を繰り返しおこなった場合に、同様の結果が得られる再現性の高さ」を表しています。

信頼度が高ければ問題ないですが、リフト値がプラスであっても信頼度の低い場合はたまたま出た数値である可能性が高いです。BLSの結果をもとに施策判断をする際は信頼度も踏まえて慎重に検討する必要があります。

例えば、MetaのBLSレポートでは、信頼度は「信頼性確率」と表現され、90%以上の結果に「*」、80%以上の結果に「^」という形でマークが付与されます。TikTokやYouTubeなど他媒体でも同様に、信頼度を示す指標や表示が用意されているのでチェックしましょう(表示方法は媒体により異なります)。リフト値だけでなく、信頼できる値かどうかまで確認して広告の効果を読み解くことが、次の一手につながります。

「うまくいかなかった」時こそ冷静に 

BLSを実施すると度々「うまくいかなかった」と言いたくなる場面に遭遇します。例えばレポートの信頼度が低かった。リフト値がマイナス表示になっていた。なぜかレポートの数字が出なかった。このような時こそ「今回はうまくいかなかった」で片づけず、原因を深く掘り下げることが重要です。例えば次のようなパターンに陥っている可能性があります。

    • サンプルサイズ不足
      アンケートを掲出したユーザーに回答のアクションをもらえなかったなどの理由から、十分な回答数が確保できず、結果数値が算出されないケース。あらかじめ決められた必要回答数に対しユーザーの回答が不足すると、サンプルサイズ不足となり、調査結果レポートそのものが出ない場合があります。
    • 結果の信頼度が低い
      調査結果レポートは出たものの、信頼度の低い結果となったケース。類似商材の広告が同時期に配信されていた、同時実施していたテレビCMが調査上広告非接触グループに分類されているユーザーにも接触していたといったノイズ(外的要因)が影響することがあります。リフト値がプラスであっても「当該広告の効果」とは言い切れない状態です。
    • リフトしなかった
      サンプルサイズ、信頼度の充分な調査において広告による態度変容を起こせていないと示されたケース。広告の印象が薄い、ユーザーに響かなかったなど理由はさまざまですが、広告接触・非接触グループ間で成果に差がついていない状態です。この結果をもとに改善が必要と言えます。

「うまくいかなかった」ときこそ、お手元の結果がどれに該当するのかを正しく判断することが、次の一手を考えるうえで重要です。3番目の場合は広告クリエイティブや配信設計の見直しが論点になりますし、1番目や2番目の場合はそもそもの実施条件を見直す必要があるかもしれません。「うまくいかなかった」で終わらせると、次の一手を誤るリスクが高まります。一度立ち止まって見直す冷静な視点が鍵です。

「今回は良かった?悪かった?」BLS結果と向き合うための評価軸 

冷静な視点で結果を受け止めたら、いよいよ目の前のリフト値と向き合っていきましょう。そのためには今回の結果の良し悪しを測る、明確な評価軸を持つことが重要です。

① ノーム値比較で「相対的な立ち位置」を把握する 

過去に実施したBLSの結果や、同業種の平均値(ノーム値)との比較は、今回の施策が相対的にどのレベルにあったのかを評価することに役立ちます。

仮に今回の実績が過去や業界平均を下回る場合は、「なぜ低かったのか?」を深く分析するきっかけになります。クリエイティブ、ターゲット、配信設計など、さまざまな要素を検証することで、次のメディアプランニングに活かすことができます。 媒体によっては、同業種の平均値を提供している場合もあり、自社の立ち位置を客観的に把握するための貴重な情報源となります。

ただし、比較対象の数値がノーム値として適切かどうかは必ず確認しましょう。業種や商材が異なるとリフト値の傾向も異なります。同一ブランドの調査結果であっても、目的や訴求など異なる場合は単純比較が適さないケースもあります。

② 「ブランドリフト単価」という視点で「費用対効果」を可視化する

「媒体Aで10Ptsリフトした!」「媒体Bは2Ptsしかリフトしなかった…」と、リフト値だけを見て媒体Aが優れていると判断するのは早計かもしれません。

ここで注目したいのが「ブランドリフト単価」という考え方です。ブランドリフト単価は「1人当たりの態度変容単価」を考慮する指標で、リフト値単体ではなく、ブランドリフトに要したコストを計算に含めます。広告配信した、リーチ効率の異なる複数メディアを、より公正に比較する際に役立ちます。

ブランドリフト単価 = コスト / (リーチ × ブランドリフトの%)

ブランドリフト単価は「リフトの大きさ」だけでなく、「どれだけ効率的にブランドリフトを獲得できたか」という観点で評価をする指標です。

例えば複数メディアへ同コストを投下した施策において、媒体Aはブランドリフト値は高かったがリーチが限定的、媒体Bのブランドリフト値はAより低かったが圧倒的にリーチが広かった、というケースを考えてみましょう。この場合、ブランドリフト単価で比較すると、媒体Bの方がブランドリフト獲得効率が高い、という結論になる可能性があります。

ブランドリフト単価は、特に複数メディアを横断して広告を出稿する際、メディア選定や予算配分の判断材料として有効です。もちろん選定メディアによっては視聴態度やユーザーのモチベーションの異なる場合があるため、ブランドリフト単価も完全に公平な指標とは言いきれません。ブランドリフト単価の良い媒体に次回予算のすべてを配分するような極端な判断は推奨されませんが、「この媒体は本当に効率的?」、「どの媒体に予算を多く割くべき?」といった、よくある疑問に対し、ブランドリフト単価はデータに基づいた答えを導き出す一助となるでしょう。

BLSを”次の一手”に繋げる!具体的な活用パターン

BLSの価値は、一度の結果の良し悪しで終わらせず、ブランディング活動のネクストアクションに繋げることでより発揮されます。定点調査の実施によって、認知施策のパフォーマンスをブラッシュアップしていくことが、理想的なBLSの使い方です。

具体的なBLSの活用術として、以下のようなものが代表的です。

    • 自己分析:
      定期的にBLSをおこない、態度変容指標の推移を計測。蓄積した過去施策のノーム値をもとに目標を設定し、施策の効果を評価します。年間を通じてどの施策で大きなリフトが見られたかを検証し、次回のプロモーション戦略に活かします。
    • 競合比較: 
      業種・商材別の平均ノーム値との比較、あるいは「○○と聞いて一番に思い浮かべるブランドはどれですか?」のような設問を聴取して、競合やベンチマークとするブランドと自社ブランドとの比較をおこないます。これにより、市場における自社ブランドの立ち位置を把握し、ブランド戦略の課題を分析できます。
    • メディア選定: 
      複数メディアでBLSを実施し、メディアごとのコスト効率(ブランドリフト単価)を比較します。自社ブランドにとって認知や理解の向上に有効なメディアを分析し、次回以降のメディア選定の判断材料とします。
    • ターゲット検証: 
      複数のターゲット層に分けてBLSを実施し、ターゲットごとのリフト値を比較します。自社ブランドにおいて認知や理解の向上に有効なターゲティング条件を分析し、最適なターゲット選定に役立てます。
    • クリエイティブ検証: 
      複数のクリエイティブ(フォーマット、訴求軸、ビジュアルなど)ごとにBLSを実施し、それぞれのリフト値を比較します。これにより、認知や理解の向上に有効なクリエイティブ要素を特定し、効果的なクリエイティブ制作に繋げます。
    • 配信手法検証: 
      複数の配信手法(購入方法やキャンペーン目的など)ごとにBLSを実施し、リフト値を比較します。自社ブランドに有効な配信手法を分析し、次回以降の配信設計に活かします。

挿入画像2(BLS を”次の一手”に繋げる!具体的な活用パターン)
これらの活用パターンは、「リフトしたかどうか」だけでなく「どのクリエイティブが効いたのか?」「どのメディアが効果的なのか?」といった、実務上の問いへ具体的な示唆を与えてくれます。
BLSを“改善のための調査”として運用することで、ブランディング広告施策の”次の一手”が見えてくるでしょう。

終わりに

ブランドリフト調査(BLS)は単に広告効果を測定するだけでなく、結果を正しく読み解き、戦略に落とし込むことで価値を発揮します。「BLSでリフトした」という結果に満足するだけでなく、その信頼性を確かめ、ノーム値比較やブランドリフト単価といった評価軸を持って活用し、具体的な改善アクションへつなげていくことが重要です。

本記事が、BLSへの理解を深め、日々のデジタルマーケティング活動において新たな気づきを得る一助となれば幸いです。

 プラットフォームR&D本部ブランドR&D局 執筆者

大江 萌
髙野 夢大
齋藤 太郎
假屋 魁聖

 

この記事の著者

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プラットフォームR&D本部 ブランドR&D局

Hakuhodo DY ONEのプラットフォームR&D本部ブランドR&D局は、デジタル広告のブランド領域に深い知見を持つエキスパートで構成される、メディア特化型の研究開発部門です。データに基づいた自社独自のナレッジ創出や推奨設計の構築を通して、クライアント企業の広告効果を最大化し、ブランド価値向上に貢献することをミッションとしています。

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