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急成長する中国マイクロドラマ市場ーAI作品をめぐる規制から考える日本市場への示唆

執筆者:
広告技術研究部
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中国では2026年9月1日に、マイクロドラマ※1を対象とした新たな規則が施行されました。その背景には、生成AIの活用による作品供給の急増する一方で、コンテンツの品質や著作権をめぐる課題が顕在化していることがあります。本記事では中国で先行して起きているマイクロドラマ市場の変化をもとに、コンテンツ供給の拡大に伴って生じる課題を整理します。

(※1)マイクロドラマとは:主にスマートフォンでの視聴を前提とした、1話あたり数十秒から数分程度で構成される短編の連続ドラマ。

中国で3.5億人が視聴するマイクロドラマ市場

中国のマイクロドラマ視聴者数は、2026年に3億5,410万人に達し、2030年には4億90万人まで増加する見通しです。※2さらに、一人あたりの月間視聴時間は、2025年1月の13.0時間から2026年5月には26.9時間へ倍増し、OTT動画の14.7時間を大きく上回りました。マイクロドラマを活用する広告主は、美容、自動車、旅行、食品など多様な業種に広がっています。商品を劇中に登場させるプロダクトプレイスメントに加え、企業やブランドがオリジナル作品を制作する動きも増えています。
(※2)出典:Emarketer, Inc.、「Data Drop: 5 Charts on Microdramas in China」、2026年掲載 

01_急成長する中国マイクロドラマ市場ーAI作品をめぐる規制から考える日本市場への示唆

図1:中国におけるマイクロドラマの視聴時間

出典:Emarketer, Inc.、「Data Drop: 5 Charts on Microdramas in China」、2026年掲載
(元データ:QuestMobile、「2026 Short Drama Marketing Industry Report」、July27,2026)

生成AIの活用で広がる供給と品質管理の課題

市場拡大を加速させた要因の一つが生成AIの活用です。中国ネット視聴番組サービス協会によると、2026年第1四半期に公開されたマイクロドラマは約12.8万作品で、そのうちAIマイクロドラマが95%以上を占めています。(※3)

また、DataEyeの「2026年上半期AIドラマ・アニメーションデータレポート」によると、2026年上半期には、毎月約2万~4万シリーズのマイクロドラマがDouyinで公開され、合計約22万シリーズに達しました。一方、再生回数が1億回を超えた作品は1,055シリーズ、5,000万回以上を記録した作品は2,886シリーズで、全体の約1.3%にとどまります。マイクロドラマの損益分岐点を仮に5,000万再生とみなす場合、多くの作品が採算ラインに達していない可能性があります。ただし、採算性は製作費、配信モデル、広告収益、課金設計などによって異なるため、再生回数のみで一律に判断するのは難しい側面があります。

AIを活用して制作された作品のすべてが低品質というわけではありません。一方で、低コスト・短期間で制作され品質管理が不十分なコンテンツも流通しています。こうしたコンテンツは一部で「AIスロップ」とも呼ばれることがあります。大量に流通することで、良質な作品が視聴者に届きにくくなることが課題として指摘されています。

さらに、澎湃新聞の「每36秒上新一部!AI短剧狂飙,短剧江湖正在换主角」の報道によると、2026年7月には、Douyin上でAIマイクロドラマの新作シリーズが平均36秒に1本のペースで公開されたとの集計もあります。中国ネット視聴番組サービス協会は、「制作コストの低下によって同質的な作品が大量生産され、品質面で課題のあるコンテンツ増加している」と指摘しています。(※4)
(※3,4)出典:中国网络视听协会 、「政策护航 AI微短剧迈入发展新阶段原创」、2026年8月

02_急成長する中国マイクロドラマ市場ーAI作品をめぐる規制から考える日本市場への示唆

図2:2026年上半期にDouyinで公開された新作AIマイクロドラマの数
出典:DataEye、「2026年上半期AIドラマ・アニメーションデータレポート」より当社作成

2026年9月施行の管理規則、AI作品も明確に規制対象へ

こうした状況を受け、中国では2026年9月1日から「マイクロドラマディベロップメントガイド(微短剧发展管理办法)」が施行されました。

同規則では、作品を規模や題材に応じて3分類し、行政当局または配信プラットフォームによる審査・管理を定めています。さらに、AIを用いて生成・制作された作品については、AI利用を示す表示を各話に入れることを求めています。

  • 第一類

    • 実写作品:製作費300万元以上(約7,200万円、1元24円換算)

    • AI作品:製作費80万元以上

    • または政治、軍事、外交、国家安全保障、民族、宗教、司法、公安などを主要テーマとする作品

        • 撮影前に届出・公示をおこない、完成後に行政審査を受けたうえで、「発行許可証」を取得して配信

  • 第二類

    • 実写作品:製作費100万元以上300万元未満

    • AI作品:製作費30万元以上80万元未満

    • 一般的な題材を扱う作品

    • 完成後、行政当局による内容審査を受け、批准文書を取得して配信

  • 第三類

    • 実写作品:製作費100万元未満

    • AI作品:製作費30万元未満

    • 一般的な題材を扱う作品

    • 行政当局による個別審査はおこなわず、配信プラットフォームが配信前に審査し、番組番号を付与

特に第一類に該当するマイクロドラマについては、撮影・制作段階から届出・公示を求める厳格な管理制度が導入されています。第二類に関しても同様の規制を今後適用する方針が示されています。

また、AIを用いて生成・制作された作品には、各話の目立つ位置にAI利用作品である旨の表示を義務付けています。配信プラットフォームには、推薦アルゴリズムの仕組み、モデル、データ、結果を定期的に検証することが求められ、ユーザーの過度な利用や消費を助長するアルゴリズムの使用も禁止されています。

著作権も大きな論点です。AIによる他者の顔を無断利用する行為(中国語で『盗脸』)や、既存IP・素材を無断使用した作品が問題となっており、2026年には主要プラットフォームがAI作品の大量点検・削除を実施しています。中国ネット視聴番組サービス協会は、今後は作品公開後に問題へ対応する「事後対応(結果治理)」から、素材や制作段階まで含めた全工程での権利管理へ移行する必要があるとする専門家の見解を紹介しています。こうした動きを受けて、現地の専門家や制作会社からは、これは市場の縮小ではなく、競争軸の変化であるとの見方も示されています。

大量のマイクロドラマが生み出されている中国では、視聴者の間で定型的な作品への飽和感も生まれ、競争軸が「量」から「質」へと移行していると指摘されています。今回の規制によって、届出や審査に対応できない作品や、品質管理が不十分な作品は流通しにくくなる可能性があります。現地の制作会社・業界関係者の間では、今後、マイクロドラマにおいてもIP化・高品質化、ブランド向けコンテンツのオーダーメイド(受託制作)へ展開することが重要になるとの見方が出ています。

中国では、AIによって制作可能な作品数が急増した結果、コンテンツの大量生産、同質化・低品質化、プラットフォームによる選別、政府による制度化を経て、競争軸が量から品質へ移りつつあると考えられます。

日本でも供給は拡大、視聴経験は限定的

日本でもマイクロドラマ市場への参入が進んでいます。BUMP、タテドラ、FOD SHORTなどの専用アプリが拡大しており、無料のSNS動画として視聴を集める段階から、専用アプリでの課金、既存IPの映像化、海外配信まで、ビジネスモデルの幅が広がり始めています。

一方、視聴者側の状況は異なります。株式会社フィールドワークスが2026年に実施した全国調査では、縦型ショートドラマの認知率は49.2%に達したものの、実際に視聴した経験がある人は12.1%、有料で視聴した経験がある人は1.8%でした。視聴経験者の約4割は「たまたま見ただけで、ほとんど見ない」と回答しています。
出典:株式会社フィールドワークス、「縦型ショートドラマの認知率は 49.2%、視聴経験は 12.1% 有料の映像メディア利⽤率は、「映画館」「SVOD」が4割ほどで並ぶ」

国内の制作現場からも、参入企業の増加による供給過多、企画目的と成果指標(KPI)のずれ、短時間で視聴者を引きつけ続ける脚本設計の難しさが課題として挙げられています。制作後の視聴維持率や連続視聴などを分析し、作品を改善していく運用も重要になっています。

まとめ

マイクロドラマ市場は、広告主の参入や海外展開の広がりを背景に、今後も成長が見込まれます。しかし、市場が先行する中国では、AI活用による供給過多、作品の同質化、品質管理が不十分なコンテンツの増加、ヒット率の低下を経て、管理・規制の強化へとつながる動きがすでに見られます。日本でも参入企業や制作本数が増加すれば、同じように供給過多や作品の同質化といった課題が生じる可能性があります。直ちに中国と同様の規制が導入されるとは限りませんが、AIスロップの増加には注意が必要です。今後は、AIによって制作効率を高めるだけでなく、脚本設計や視聴データの分析、コンテンツの品質管理に継続的に取り組むことが重要です。

Hakuhodo DY ONEでは、生成AIを含む新たなコンテンツ・広告表現に関する市場動向の把握や、データに基づくコミュニケーション設計を支援しています。マイクロドラマを活用したブランドコミュニケーションや配信・効果検証の設計については、お気軽にご相談ください。

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広告技術研究部

広告技術研究部は、Hakuhodo DY ONEのR&D組織としてデジタル広告に加え、デジタルビジネスやテクノロジーに関するリサーチをおこなっています。リサーチから得られた高い専門性を持つナレッジを社内の事業部門や企業に提供し連携することで、事業成長や事業創出の支援をしています。

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陳 辰

2023年 Hakuhodo DY ONE入社。テクノロジーR&D本部 研究開発局 広告技術研究部にて、先端テクノロジーや海外エージェンシー・法規制の調査を軸に、広告領域への応用可能性を分析。AI・センサー・半導体・ゲーム・UGCなど幅広い技術潮流を俯瞰し、企業の事業機会創出に向けたナレッジ提供および新規領域の研究開発を推進。

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