媒体アップデートのキャッチアップが、広告運用の『解像度』を変える理由 ~仕様変更を見落とさない運用分析のポイント ~
- 執筆者:
- 荒巻 奈那子
デジタル広告を運用する中で、「なぜか急にCPCが上がった」「CTRが急に低下している」といった数値変動に戸惑った経験はありませんか。こうした変動は競合の動向や季節性が要因として挙がりやすい一方で、広告媒体の仕様アップデートが影響している場合もあります。
本記事では、2025年に公表されたGoogle 広告の2つのアップデートと当社の分析事例を紹介します。仕様を正しくキャッチアップすることが、広告運用の「解像度」をどのように変えるのかを解説します。
事例①同一広告主の「2枠掲載」でCTRが30〜40%低下
アップデートの概要
Googleは、検索結果ページの下部に表示される広告の関連性を高めるため、広告の掲載に関する仕様を変更しました。 Googleの調査では、ユーザーがページ下部のコンテンツを確認した後、より関連性の高い上部の結果に戻るという行動が確認されました。このような行動をふまえ、下部の広告の関連性を高めることを目的とした変更がおこなわれました。
数か月のテストでは、この変更により下部広告のコンバージョン数が約14%増加し、ページ下部におけるユーザー体験と広告主にとっての価値の両方の向上が見込めると判断されたことから、本アップデートが実施されました。
(出典:Google, ページ下部に表示される検索広告の関連性の向上 , Google 広告ヘルプ)

図1:Google広告ヘルプ “ページ下部に表示される検索広告の関連性の向上“
今までは、同一広告主の検索広告は原則として1ページ内の1つの広告掲載枠にしか表示されませんでした。2025年2月から段階的に実施された本アップデートにより、ページ上部の広告掲載枠に表示された広告主の関連性の高い広告が、下部の広告掲載枠のオークションにも参加できるように変更されています(以下、同一広告主の広告が上下2枠に同時掲載される状態を「2枠掲載」と表記します)。
なお、公式ヘルプでは、上部広告と下部広告のいずれのオークションでも、同一広告主の広告が入札で競合することはないとされています。
今回の仕様アップデートによって広告指標はどう変わる?
2枠掲載により、1回の検索で同一広告主の広告が上部と下部の2箇所に表示されるようになりました。この場合、ユーザーの行動が変わっていなくても、計上されるインプレッションの数だけが増えます。

図2:同一広告主の「2枠掲載」でインプレッションとクリックのカウントはどう変わるか
従来は、ユーザーがページ下部まで閲覧したうえで上部の広告に戻ってクリックした場合、計上されるのはインプレッション1・クリック1でした。2枠掲載後は、同じ1クリックでも上部・下部の2件のインプレッションが計上されます。クリック数が変わらないままインプレッションだけが増えるため、CTRは構造的に低下します。実際に当社データを分析したところ、業種を問わずCTRは30〜40%程度低下していました。
図3:【当社データ】<2024年1月〜2025年10月> インプレッション×CTR 日別推移
※2025年2月頃より2枠掲載のテストが開始
また、本アップデートに伴い上部/最上部インプレッション率の定義も2枠掲載の開始後に変更されています。過去実績と比較する際は、実績そのものの変動と定義変更による影響を切り分けて評価する必要があります。
- As Is:
検索広告の上部インプレッション率 = 検索結果ページの上部で発生したインプレッションの数 ÷ すべてのインプレッション数(特に制約は無し) - To Be:
検索広告の上部インプレッション率 = 検索結果ページの上部で発生したインプレッションの数 ÷ すべてのインプレッション数(ユーザーによる1回の検索でカウントされるインプレッション数は広告主ごとに最大1回 ※)
※この上限は上部インプレッション率を算出する際のカウント方法に対する変更で、インプレッション数そのものには適用されません。

図4:上部インプレッション率の定義変更について
事例②LP評価モデルの変更で、直帰率の高いLPほどCPCが上昇
アップデートの概要
2025年2月より、Googleでは新しいランディングページ(LP)の予測モデルが導入され、LPの中でもユーザーの意図との乖離やナビゲーションの容易性を厳しく評価するよう仕様がアップデートされました。評価される観点は、主に以下の3点です。
- 期待との乖離:
- ユーザーが求めているもの(例:ログイン、特定の製品)と、着地したページ(例:一般的なプロモーション)がずれていないか
- ナビゲーションの容易性:
- 期待と異なるページに着地しても、目的の場所にすぐ移動できるか(メニューやリンクの分かりやすさ)
- 負のユーザー体験:
- ユーザーが「戻る」ボタンでGoogle検索結果にすぐ戻ってしまう(直帰する)行動を、LPの品質が低いシグナルとして捉える
なお、Googleの公式ブログ(2025年2月5日)では、「検索結果とLPの間を行き来する行動」と表現されており、直帰率という指標名自体には言及されていません。本記事では、運用者が観測可能な代理指標として直帰率を用いて検証をおこなっています。

図5:LPナビゲーションの品質評価に反映される仕組みについて
(出典:Google, 検索広告とランディングページナビゲーションの重要性, Google Ads & Commerce Blog)
今回の仕様アップデートで広告指標はどう変わる?
当社では当初、2枠掲載による影響を前提としてCPC上昇の要因を調査していましたが、LP評価モデルの変更を仮説として社内で追加調査を実施しました。なお、一般キーワードは季節性や競合動向といった外部要因の影響を切り分けることが難しいため、外部要因の影響を受けにくい指名キーワードに対象を絞って検証をおこなっています。
検証の結果、直帰率の高いLPを持つ案件ほどCPCの上昇幅が大きい傾向が見られました。相関係数は0.54で、強い相関とはいえないものの一定の関連性がうかがえる水準です。このことから、2025年2月頃から発生していたCPC上昇要因の1つに、本アップデートが含まれる可能性が示唆されます。

図6:【当社データ】<2024年1月〜2025年10月> LP評価モデルの変更に伴うLP直帰率×CPC上昇インパクトのデータ
上記の分析から、これまではLPの内容が中心に評価されていたと考えられますが、本アップデートでは「ユーザーが目的のページにたどり着けるか」というナビゲーションの観点が評価に組み込まれました。当社の検証結果を踏まえると、LPの状態がCPCに与える影響は従来よりも大きくなっていると示唆されます。運用改善の対象は広告アカウントの内側だけにとどまらない、という前提認識を改めて持つ必要があります。
数値変動を正しく読み解くための3つの習慣
今回取り上げた2つのアップデートは、 2025年のGoogle 広告における公式リリースの中でも、決して大きく報じられたものではありません。しかし、数値を細かく追う運用者は、一見すると些細な仕様変更がパフォーマンスに与える影響を把握しておく必要があります。仕様変更を仮説に照らして検証できる状態をつくることが、真因の特定と、本質的な成果改善へつながります。日々の運用の中で、以下の3点を習慣化することをおすすめします。
-
公式ヘルプおよびリリース情報の更新履歴を定点で確認する
-
アップデート時に「実績の変化」だけでなく「指標定義の変更有無」もあわせて確認する
-
過去実績と比較する際は、施策による変動と仕様変更による変動を切り分けて評価する
まとめ
情報の移り変わりが激しいデジタル広告において、数値変動を適切に読み解く力は運用者に求められる基礎体力です。たとえサイレントアップデートであっても、管理画面の向こう側で起きている変化を正しくとらえ、広告主の利益を守る広告配信設計を実現することが、広告運用の「解像度」を高め、信頼の獲得につながると考えます。
Hakuhodo DY ONEでは、媒体アップデートの詳細把握とそれに伴う数値変動の要因確認を、組織的におこなっています。AIを活用して分析を効率化できる今こそ分析に利用する情報の正確さや解釈が課題特定と打ち手の質を左右します。全運用担当者が適正な情報にアクセスできるようにすることで、高度なデジタル運用の専門性を担保しています。デジタル広告に関するご相談は、Hakuhodo DY ONEまでお気軽にお問い合わせください。
※本記事の内容は、2026年8月時点でGoogleが公開している情報および当社の配信データをもとに作成したものです。広告の仕様や指標の定義は、予告なく変更される場合があります。最新の情報は、Google広告の公式ヘルプ等をご確認ください。
※本記事に掲載している数値は、当社が運用する一部アカウントの実績を集計・分析したものです。すべての広告主様・業種で同様の結果が得られることを保証するものではありません。
※本記事における要因の分析や考察(直帰率を代わりの指標として用いた検証を含む)は、当社独自の見解であり、Googleの公式見解を示すものではありません。
※Google、Google広告は、Google LLCの商標です。
この記事の著者
荒巻 奈那子
2023年に株式会社アイレップ(現 株式会社Hakuhodo DY ONE)へ新卒入社。入社以来、デジタル広告の運用に従事し、主にBtoCクライアントの獲得領域を担当。2025年度からはGoogleチームを兼務し、社内におけるGoogle広告の運用スキルの標準化・向上に向けた研究業務にも取り組む。
Google 検索で優先的にONEDERの情報を受け取る
メルマガに登録する
メールマガジンでは、企業のマーケティング戦略立案や日々の業務に役立つ、「驚き」と「発見」に満ちた最新情報を定期的にお届けしてまいります。
受信を希望される方は、フォームからご登録ください。