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脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~【セミナーレポート】

執筆者
ONEDER編集部
この記事は約1分で読めます

2026年3月25日、株式会社NeUと株式会社Hakuhodo DY ONEは、「脳科学で読み解く『無視されない動画広告』〜思わず見てしまう"感情トリガークリエイティブ"とは何か〜」と題した共催ウェビナーを開催しました。

情報過多が進む現代社会において、生活者が広告に接触する時間は限られています。どれほど効率的に広告を配信しても、生活者の心をつかむ「クリエイティブの質」が伴わなければ、本質的な成果にはつながりません。「配信数値の目標は達成しているにもかかわらず、ブランド好意度や購買行動に結びつかない」という課題を抱える企業も少なくありません。

この「届いているが、伝わっていない」状況が生まれる根本的な要因は、従来のアンケート調査や配信データといった顕在的な指標だけでは、無意識下の反応や記憶への定着度を把握しきれず、その知見をクリエイティブ制作へ十分に活用できていない点にあります。本記事では、脳科学・ニューロマーケティングを基盤とするNeUと、デジタルマーケティングに強みを持つHakuhodo DY ONEによる共同研究の成果を紹介します。

【登壇者】
岡田 拓也
株式会社NeU
ジェネラルマネージャー

橋本 翔
株式会社Hakuhodo DY ONE
クリエイティブプランナー

福田 美緒
株式会社Hakuhodo DY ONE
クリエイティブプランナー

笹野 由衣
株式会社Hakuhodo DY ONE
メディアプランナー

※本記事は、2026年3月25日に開催されたセミナーの内容をもとに、一部加筆・修正して掲載しております。

1日1,600個の広告に埋もれる現状

「届いているのに伝わらない」広告の実態

笹野:現代の生活者を取り巻く環境を整理します。管理画面上の数値では多くの人に広告が届いているにもかかわらず、態度変容や行動変容といった成果になかなか結びつかないという課題をお持ちの広告主は多いのではないでしょうか。結論から申し上げると、今、動画広告は認識されにくくなっています。その背景を現代の環境から考えてみます。

01_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~Hakuhodo DY ONEディアプラ  由衣

情報過多とタイパ志向が生む視聴態度の変化

笹野:SNSや動画をはじめとしたさまざまなコンテンツが台頭したことにより、生活者の可処分時間を奪い合う情報過多の状態が生じています。近年のタイパ(タイムパフォーマンス)志向の高まりも相まって、ながら視聴が増加し、生活者の動画視聴態度は多様化しています。ながら視聴中の広告注視率はわずか3%程度とされており、動画広告の内容を届けるハードルは高まっています。

わずか0.5秒で判断される広告の運命

笹野:生活者に対し1日あたりに表示される広告は約1,600個にものぼるとされています。広告も含めた1本の動画を視聴するかどうかは、わずか0.5秒の間に判断されます。また、自分に関連性がないと感じた広告は、81%の生活者が即座にスルーするという状況にあります。このような環境変化への適応の遅れが、「届いているはずなのに伝わっていない」という状態を招いています。

02_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

クリエイティブの質がROIを左右する時代へ

笹野:この状況を解決する鍵は何でしょうか。広告成果に影響を与える要因として、メディア・ターゲティング・クリエイティブが挙げられますが、なかでも重要度が増しているのがクリエイティブです。多くのマーケターはマルチメディア設計を重視しますが、実際の研究では、ROIに与える影響としてクリエイティブの質がメディア設計の約5倍の影響力を持つことが明らかになっています。「何をどう伝えるか」の重要度が増しており、クリエイティブが1インプレッションの価値を高める鍵になります。

03_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

生活者視点への「翻訳」が成功の分岐点

笹野:どのようなクリエイティブを制作すべきかを考えるうえで大切なのは、生活者視点への翻訳です。企業が伝えたいことを、生活者の視点に立って発見や共感を生む情報へ変換することが重要です。この考え方をベースに、Hakuhodo DY ONEでは生活者を惹きつけ感情を動かす独自のクリエイティブフレームワーク「Attention To Action」(以下、ATA)を開発しました。

潜在層を動かす新フレーム「ATA」

「出し手発想」から「受け手発想」への転換

橋本:広告が届きにくい状況下で、情報を出す側が受け手の状況を都合よく捉える「出し手発想」ではうまくいきません。生活者の立場に立てば、広告はほとんど見逃されているのが実情です。「広告を見ない、関心がない」という前提で制作する「受け手発想」が重要です。この受け手発想を実際のクリエイティブ設計に落とし込んだのが、私たちが提唱するATAです。

ATAとCTA、二つのアプローチの明確な違い

橋本:Hakuhodo DY ONEでは、従来型の「Call To Action」(CTA)とATAの二つのアプローチを展開しています。一言で言えば、CTAは「行動を後押しするアプローチ」、ATAは「行動を作り出すアプローチ」です。CTAはすでに購買意欲のある人に向けて「今すぐどうぞ」と呼びかけ、市場で効果が出ている訴求を媒体のロジックに合わせて最適化します。一方のATAは、購買意欲をまだ持っていない人に新しい気づきや共感を生み、自発的に動きたくなる気持ちを作ります。ターゲットの行動の裏側にある心理や感情を逆算して設計することがポイントです。

04_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

三つのフォルダで理解する使い分けの原則


橋本:人間は無意識に「利用したい」「どちらでもいい」「利用しない」という三つのフォルダで情報を仕分けています。「利用しない人」には広告よりも商品リニューアルやPRなど広告以外のアプローチが有効です。「利用したい人」にはCTAが有効で、背中を押すダイレクトなコミュニケーションが効果的です。「どちらでもいい人」にはATAが有効で、自発的に動きたくなるコミュニケーションが重要です。整理すると、CTAは顕在層、ATAは潜在層を動かすものです。目的やターゲットに応じてこの両輪を使い分け、潜在層にはATAで市場を広げ、顕在層にはCTAで刈り取るという運用が今後の主流になると考えています。

脳科学で判明したATAの有効性

NeUの脳科学技術とニューロマーケティング

橋本:ATAはこれまでの導入案件において一定の成果が確認されています。しかし、なぜ効くのかが管理画面上の数値や経験則の域にとどまっていました。「ATAが本当に感情に届いているなら、脳や体に何らかの反応が出るはずだ」という仮説のもと、NeU様と共同でATAとCTAの生体指標を比較する検証を実施しました。

岡田:NeUは、東北大学と日立が出資して設立された脳科学のベンチャーです。脳トレゲームでおなじみの川島隆太先生が創業時から取締役を務めており、東北大学の川島研究室の知見と日立の脳計測技術を掛け合わせた会社です。過去5年間で100件超の実験、3,000人近くの計測実績を持っています。

05_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~株式会社NeU ジェネラルマネージャー 岡田 拓也 氏

「氷山モデル」が示す潜在意識の重要性

岡田:今回の脳科学検証はニューロマーケティングという手法によるものです。脳波や心拍といった、人間が意識的にコントロールできない生体信号を測定し、潜在意識の側面からアプローチします。2003年にハーバード大学のジェラルド・ザルトマン博士が、消費者理解の鍵は顕在意識ではなく消費者自身も気づかない潜在意識にあると主張しました。これが「氷山モデル」として知られるものです。生体信号を計測することで、アンケートなどでは捉えにくい反応を把握できます。

06_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

28本の動画と四つの生体指標で検証

岡田:今回の検証では、20名の被験者にATAとCTAを含む28本の動画クリエイティブを視聴していただき、視聴中の生体指標を計測しました。また、後日どのクリエイティブを覚えていたかという記憶テストも実施しています。計測した指標は、脳波・瞳孔径・皮膚電位・心拍の4つです。脳波は購買意欲、瞳孔径は瞬間的な注目・興味関心、皮膚電位は感情的ピーク、心拍は記憶の定着度をそれぞれ示します。心拍数が低いほど対象への注意が強く向けられており、記憶に残りやすいという研究に基づき、心拍を記憶の指標として採用しています。

ATAは「記憶」、CTAは「注目」に優位性

岡田:検証の結果、ATAとCTAの違いが明確に現れたのは「心拍(記憶)」と「瞳孔径(注目)」の二つの指標でした。ATAは記憶を示す心拍がCTAと比較して有意に低く、記憶に残りやすいことが示されました。一方CTAは、注目を示す瞳孔径が有意に高い結果でした。脳波と皮膚電位についてはATAとCTAで差は見られませんでしたが、個別のクリエイティブ評価においては脳波指標が有効であることが示されています。事後の記憶テストにおいても、ATAの方が記憶に残りやすいという結果が得られました。さらに、アンケートの記憶回数と生体指標の相関分析では、脳波と心拍がアンケート結果と緩やかな相関を示しており、実際に記憶されたクリエイティブは両指標においても上位に位置していました。

07_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

 

脳を納得させる「三山構造」の設計

注目と記憶で分類する四つの反応パターン

08_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~(左)株式会社Hakuhodo DY ONE クリエイティブプランナー  福田 美緒
(右)株式会社Hakuhodo DY ONE クリエイティブプランナー 橋本 翔

福田:4つの指標のうち、ATAとCTAで特に傾向が分かれたのが注目と記憶の二つの指標です。それぞれの平均値を基準に高低で整理すると、広告の反応パターンは4つに分類されます。注目も記憶も高い「ドキッと定着」、注目は低いが記憶に残る「じわじわ定着」、注目は高いが記憶に残らない「速攻獲得」、注目も記憶も低い「さらっと通過」の4パターンです。記憶に残る「ドキッと定着」と「じわじわ定着」に入ったクリエイティブの約90%がATAであり、注目は高いが記憶に残りにくい「速攻獲得」の約78%がCTAでした。生体指標からも、ATAは記憶に残るクリエイティブ、CTAは瞬時に興味を引くクリエイティブという明確な役割の違いが確認されました。

09_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

広告の反応パターン4分類

 

10_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~記憶に残るATAと瞬時に興味を引くCTA

記憶に残る動画はすべて「三山構造」だった

福田:なぜATAは記憶に残りやすいのか。詳細な分析から見えてきたのが「三山構造」です。記憶指標が高いクリエイティブには感情的ピークが三山となる傾向が見られました。一方、記憶指標が低いクリエイティブはおおむね二山にとどまっていました。三山は「気になる・確かに・欲しい」という流れで構成されており、記憶が高いクリエイティブの中心に「確かに」という納得のピークがあります。この「確かに」を作れるかどうかが、記憶に残るかどうかの分岐点です。

11_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

記憶に残るクリエイティブには、一言でその場面が浮かぶ独自の設定や世界観を持つ「アイコニックな表現」と、共感や自分事化を促す「感情を動かす情報設計」という共通点がありました。一方、記憶に残りにくいクリエイティブはメリットや機能を分かりやすく整理した「ベーシックな表現」と、獲得を急かす「合理的な情報設計」の傾向があります。

岡田:脳科学的に見ると、思考を司る前頭前野は、急かされたりストレスを感じたりすると働きが低下することが研究で明らかになっています。獲得を急かすコミュニケーションアプローチが脳の働きを抑制し、記憶に残りにくい結果をもたらす可能性があります。

損失回避欲と3Bの法則が注目を生む

橋本:注目が集まる動画には二つの共通点がありました。一つ目は「損失回避欲を刺激するコピー」です。損失の可能性を想起させるコピーが冒頭にあると、瞳孔径が上昇し注目が集まる結果になりました。

岡田:損失回避は人間の根源的な反応であり、いわゆるFOMO(フィアー・オブ・ミッシング・アウト)の状態では冷静な判断が難しくなります。前頭前野が働きにくい状態がまさにここに現れています。

橋本:二つ目は「3Bの法則と顔の形」です。Beast(動物)・Baby(子供)・Beauty(美しいもの)が映っていると人間は本能的に目が留まるという広告制作の定石が、生体検証においても同様の傾向として確認されました。

広告パターン別の役割整理

橋本:「ドキッと定着」と「じわじわ定着」は「気になる・確かに・欲しい」という三山の感情変化を通じて記憶に刻まれ、潜在層に納得と理解を作っていく役割を担います。これが行動を作り出すATAの得意領域です。「速攻獲得」は注目を引いてストレートな情報で顕在層の行動を促す、行動を後押しするCTAの役割です。中長期的にデジタル広告を運用するうえで、ATAとCTAは役割が異なります。潜在層にはATAで市場を広げ、顕在層にはCTAで刈り取るという両輪の組み合わせが、中長期の成果につながります。

12_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

広告成果を最大化する「無視されない動画広告」

無視されない動画広告の二つの条件

橋本:今回の検証から見えてきた「無視されない動画広告」の条件を整理します。注目を作るには、「3Bの法則・顔の形」という視覚的な引力と、「損失回避欲を刺激するコピー」が有効です。記憶を作るには、「アイコニックな表現」で場面を焼き付け、「納得を生む情報設計」で「確かに」というピークを作ることが重要です。この記憶を作る条件は、ATAが最初から設計の根幹に置いてきたことと一致しており、脳科学検証によってその有効性が生体データとして裏付けられました。

13_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

届けるだけでなく「伝わる」広告へ

笹野:現代は1日に1,600もの広告が流れ、生活者はわずか0.5秒で視聴判断を下し、81%が関連のない広告を即座に無視します。出し手発想の広告はいくら届けても伝わらない状態にあります。その課題に対してHakuhodo DY ONEが開発したのが、受け手発想のフレームワークであるATAです。今回の共同研究では、クリエイティブの制作意図やアプローチの違いが生体指標上でも明確に現れており、生体指標は従来手法を補完する評価軸として活用できる可能性があります。今後も本共同研究を継続し、真の効果につながる動画広告設計のベストプラクティス構築を目指します。広告主との共創を通じて、広告施策のアップデートに貢献していきます。

14_脳科学で読み解く「無視されない動画広告」~感情トリガークリエイティブとは何か~

 

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